麻雀の打ち方 その4

麻雀の押し引き — 押すか降りるかの判断

麻雀の押し引きは、他家の攻撃に対して手を進める(押す)か、和了をあきらめて降りる(引く)かの判断にゃ。手の価値・切る牌の危険度・局面・相手の攻撃の強さの4つを並べて比べるにゃ。

押し引きとは — 進めるか、やめるか

他家の立直や副露を受けたとき、自分の手をそのまま進めることを「押す」、和了をあきらめて放銃しないことを優先するのを「引く(降りる)」と呼ぶにゃ。押し引きはこのどちらを選ぶかの判断だにゃ。

その2の守備篇では「降りると決めたあと、どの牌を切るか」を扱った。ここで扱うのはその手前、「そもそも降りるかどうか」にゃ。牌の安全度の見方(現物・スジ・壁・字牌の残り枚数)は、その2のものをそのまま使う。

先にひとつ断っておくと、降りても損がゼロになるわけではないにゃ。放銃は避けられても、立直者のツモ和了は止められないし、不聴のまま荒牌流局を迎えれば聴牌料を払うこともある。「降りる」は損を小さくする選択であって、損をしない選択ではないにゃ。

判断材料は4つ

押すか引くかは、次の4つを並べて決めるにゃ。ひとつでも極端な値があればそれで決まることも多いし、全部が中間なら迷う場面ということだにゃ。

押し引きを決める4つの材料
材料見るところ押しに寄る引きに寄る
自分の手の価値
打点と、聴牌までの距離聴牌していて打点もある二向聴以上、または打点が無い
切る牌の危険度
その2
現物・スジ・壁・字牌の残り枚数現物や、当たる形の少ない牌で進められる無スジの4・5・6しか無い
局面
巡目・親か子か・点棒の状況親番、終盤の聴牌序盤の二向聴、点棒に余裕がある
相手の攻撃の強さ
立直か副露か、攻めている人数副露が1つだけで打点も見えない立直、ドラポン、2人以上が攻めている

4つのうち「自分の手の価値」と「切る牌の危険度」が土台で、残りの2つはそれを補正する材料だと考えると整理しやすいにゃ。

手の価値 — 打点と聴牌までの距離

押して得られるのは自分の和了点、押して失うのは放銃したときの相手の和了点にゃ。どちらも同じ「点数」なので、まず自分の手が何点になるのかを数えるところから始める。

下は門前の手を第11章の早見表で見た例。同じ聴牌でも、1,300点の手と8,000点の手とでは、押して取り返せる額がおよそ6倍ちがうにゃ。

安い聴牌 — 立直のみ(13枚)
一萬二萬三萬五萬六萬七萬二筒三筒四筒七索九索西西
7索・9索に挟まれた8索の嵌張待ち。1萬があるのでタンヤオは付かず、東場の南家なら雀頭の西も役にならない。嵌張待ちなので平和も付かず、立直して和了しても1翻40符=子ロン1,300点にゃ。
高い聴牌 — 満貫(13枚)
二萬三萬四萬三筒四筒赤五筒七筒七筒五索六索六索七索八索
4索・7索の両面待ち。ドラ表示牌が2筒でドラは3筒。どちらで和了しても4組とも順子、雀頭の7筒は役牌ではないので平和が付く。立直+平和+タンヤオ+赤5筒+ドラ1で5翻=満貫8,000点にゃ。
和了したときの点数(第11章の早見表より)
手の中身翻数・符子のロン親のロン
立直のみ
嵌張待ち
1翻40符1,300点2,000点
立直+タンヤオ+ドラ1
嵌張待ち
3翻40符5,200点7,700点
立直+平和+タンヤオ+赤1+ドラ1
5翻(満貫)8,000点12,000点

門前のロンで符の加算が何も無い形は、それ自体が平和の条件を満たしてしまうので、上の2行は嵌張待ち(+2符)の40符にしてあるにゃ。放銃すれば、同じ表の額を今度は自分が払うことになる。相手が立直していれば、その手にも裏ドラが乗りうるので打点は読みにくい。自分の手が明らかに安いなら、押して割に合う場面は少ないにゃ。

切る牌の危険度 — 「あと何枚切るか」で数える

安全度の見方はその2の通りにゃ。確実に安全なのは現物だけで、スジ・壁・残り枚数の少ない字牌は「当たりにくい」にすぎない。

押し引きで大事なのは、今切る1枚だけを見ないことだにゃ。一向聴なら聴牌にたどり着くまでにもう1枚、二向聴なら2枚を余分に切って、そこでようやく待ちが始まる。そのあとも和了するまで毎巡1枚ずつ切り続けることになる。「この無スジを1枚通せるか」ではなく「無スジを何枚通し続けられるか」で考えると、遠い手で押す気にはなりにくくなるにゃ。

逆に、危険牌を切らずに手を進められるなら、そもそも押し引きの問題にならない。まず「現物や通りやすい牌のまま進められないか」を探すのが先だにゃ(例題1・例題3)。

局面 — 巡目・親か子か・点棒

同じ手牌・同じ危険牌でも、局面によって答えは変わるにゃ。

巡目。序盤で立直を受けた場合、押すなら残り巡目のぶんだけ危険牌を切り続けることになる。逆に終盤は、切る枚数が少なくて済むうえ、聴牌して流局を迎えれば聴牌料を受け取れることが多いにゃ。

親か子か。親は和了すれば原則として連荘で親番が続き、和了点も子のおよそ1.5倍。荒牌流局でも聴牌していれば連荘になるので、親番は押す側の見返りが大きいにゃ(オーラスで親がトップの場合はそこで終局する。第4章)。

点棒。持ち点に余裕があるなら、無理に押して大きく減らす必要は薄い。逆に持ち点が少ないときは、放銃した瞬間に0点を割って終局してしまうこともあるので、押すリスクの中身が変わるにゃ。

相手の攻撃の強さ

立直は「聴牌している」ことが確定した状態にゃ。しかも門前なので裏ドラが乗ることもあり、打点の上限は読みにくい。押し引きの相手としては、いちばん分かりやすい形だにゃ。

副露は、立直と違って聴牌かどうかも打点も確定しないにゃ。ただし、ドラをポンしている・役牌を鳴いてから数巡で手が短くなっている、といった見た目は打点や進行度の手がかりになる。断定はできないので「高そうなら重く見る」程度に使うにゃ。

役にならない客風牌をポンしている場合も注意にゃ。その鳴きだけでは1翻も付かないので、対々和や混一色のような別の役を狙っていることが多い。安い副露に見えて、実は大きい手ということもあるにゃ。

何人が攻めているかも効くにゃ。2人が立直していれば、放銃する相手が2人に増えるうえ、両方の現物という条件を満たす牌はぐっと減る。押しに必要な安全牌の条件が厳しくなるので、1軒立直のときより引く側に寄せて考えることが多いにゃ。

重く見たい副露の例 — ドラポン
五筒五筒五筒
ドラ表示牌が4筒でドラが5筒のとき、この5筒のポンだけでドラ3。役が付けば満貫級になるので、立直と同じくらい重く見るにゃ。
打点が読みにくい副露の例 — 役牌のポン1つ
發發發
發をポンしただけで、ドラは鳴いていない。役牌1翻にドラが乗らなければ1,000〜2,000点クラスだけれど、ここから混一色や対々和に伸びることもある。副露は聴牌かどうかも打点も確定しないにゃ。

全部降りる以外の選択 — 回し打ち

押すか、ベタオリするかの二択ではないにゃ。安全な牌を切りながら、和了の可能性も残して打つのが「回し打ち」だにゃ。

成立する条件は単純で、安全な牌を切っても向聴数が戻らない(または戻っても1つまで)ことだにゃ。手の中に立直者の現物があって、それが余剰のブロックや浮き牌なら、そこを切るだけでノーリスクで1巡しのげる。

安全牌が1枚しか無いときは注意にゃ。今巡はしのげても、次の巡目でまた同じ選択を迫られる。もっとも、他家が切った牌で新しい現物が増えることもあるので、続けられるかどうかは巡ごとに見直すことになるにゃ。

もうひとつ、「部分的なオリ」という中間もある。手の中の危険牌は切らずに抱えたまま、安全な牌でブロックを1つ崩して、残りの形は残しておく打ち方だにゃ。完全に降りるより和了の目は残り、押し切るより切ることになる危険牌の枚数は減るにゃ。

例題1 — まず「タダで押せないか」を探す

8巡目、下家が立直。自分は中をポンして聴牌していて、ツモ牌は9索。ドラ表示牌は1索なのでドラは2索で、手の中に2枚ある。何を切る?

立直者の捨て牌
一筒北九索五萬南六筒
右端の6筒が立直宣言牌。現物は1筒・北・9索・5萬・南・6筒の6種類にゃ。
ポンしている中
中中中
自分の手牌(10枚)+ツモ牌
三萬四萬五萬六筒七筒八筒五索六索二索二索九索
5索・6索の両面で4索・7索の8枚待ち。雀頭は2索でドラ2にゃ。

例題2 — 二向聴で打点も無い

9巡目、上家が立直。自分は門前の二向聴で、ドラは無い。1萬があるのでタンヤオは付かず、東場の南家なので雀頭候補の西も役にならない。和了しても立直と平和くらいにゃ。何を切る?

立直者の捨て牌
九萬白二筒一索七萬三索
右端の3索が立直宣言牌。現物は9萬・白・2筒・1索・7萬・3索にゃ。
自分の手牌(14枚)
一萬二萬三萬六萬七萬五筒六筒八筒九筒三索四索七索西西
切る候補ごとの向聴数と受け入れ
切る牌この立直者への安全度向聴数受け入れ
3索
現物
当たらない二向聴4種16枚
7萬
現物
当たらない二向聴4種16枚
7索
無スジ二向聴6種24枚
9筒
無スジ二向聴6種24枚

受け入れは「4枚 − 自分の手牌にある枚数」で数え、場に見えている牌は引いていない(その1と同じ数え方)。

例題3 — 回し打ちで一向聴を保つ

7巡目、対面が立直。自分は門前の一向聴で、ドラ表示牌は1萬なのでドラは2萬、雀頭の2萬2枚がドラ2にゃ。順子で仕上がって両面で和了れば平和も付くので、立直+平和+ドラ2で30符4翻=切り上げ満貫の8,000点になる手だにゃ。何を切る?

立直者の捨て牌
東一萬九筒發二索三筒
右端の3筒が立直宣言牌。現物は東・1萬・9筒・發・2索・3筒にゃ。
自分の手牌(14枚)
二萬二萬三萬四萬五萬三筒四筒六筒七筒八筒四索五索七索八索
3〜5萬と6〜8筒の面子2組、雀頭は2萬。ターツが3・4筒、4・5索、7・8索と3つあり、1つ余っている一向聴にゃ。
切る候補ごとの向聴数と受け入れ
切る牌この立直者への安全度向聴数受け入れ
7索
無スジ一向聴4種16枚 2筒4・5筒4・3索4・6索4
3筒
現物
当たらない一向聴3種12枚 3索4・6索4・9索4
2萬
雀頭を崩す
無スジ二向聴向聴数が戻るので比べない

8索を切っても7索と同じ16枚、4筒を切っても3筒と同じ12枚になる。

例題4 — 安い聴牌で無スジしか無い

11巡目、上家が立直。自分は4〜6萬をチーして聴牌していて、役はタンヤオだけ、ドラも無い。ツモ牌は6萬で、手のどこにも使えない。何を切る?

立直者の捨て牌
二萬南七筒一索三索九筒
右端の9筒が立直宣言牌。現物は2萬・南・7筒・1索・3索・9筒にゃ。
チーしている4〜6萬
四萬五萬六萬
自分の手牌(10枚)+ツモ牌
二筒三筒四筒六筒七筒五索六索七索三索三索六萬
6筒・7筒の両面で5筒・8筒の8枚待ち。手牌もチーした4〜6萬もすべて2〜8の数牌なのでタンヤオは確定、30符1翻=子ロン1,000点にゃ。
2つの選択肢
切る牌この立直者への安全度手への影響
6萬
押す
無スジ。3萬も9萬も河に無いので、4・5萬と7・8萬の両面2通りに加えて5・7萬の嵌張、単騎、シャンポンで当たりうる1,000点の聴牌を維持
7筒
引く
現物。当たらない聴牌は崩れるが一向聴。ツモってきた6萬は手に残る。7筒をもう1枚引けば元の5筒・8筒待ちに戻る

6萬は無スジの中でも当たる形がいちばん多い部類にゃ(その2の安全度の表)。7筒を切ったあとは、7筒を待つ形に変わっても自分の捨て牌にあるので振聴になり、ロンはできない(ツモは可)。

迷ったときの順番

最後に、判断の手順として並べておくにゃ。

①現物や通りやすい牌のまま手を進められないかを探す。できるならまずそれを選ぶ。押し引きの問題にならないからにゃ(例題1・例題3)。②自分の手の価値を見る。聴牌かどうか、和了して何点かを数える。③切る牌の危険度と、聴牌・和了までに切ることになる危険牌の枚数を数える。④巡目・親か子か・点棒、そして相手の攻撃の強さで補正する。

そのうえで迷ったら、降りるほうを選んでおくと大きく崩れにくいにゃ。押して得られるのは自分の打点までだが、放銃で失うのは相手の打点まで。立直や重い副露に対して、自分の手が同等以上の打点を持っていないなら、押し切る理由は薄いにゃ。

この記事のまとめ

  • 押し引きは「手の価値・切る牌の危険度・局面・相手の攻撃の強さ」の4つで決める。
  • 手の価値は打点と聴牌までの距離の掛け算。同じ点数でも、聴牌と二向聴はまったく別物。
  • 今切る1枚ではなく、和了までに切ることになる危険牌の枚数で数える。
  • 現物や通りやすい牌のまま手を進められるなら、まずそれを探す。
  • 安全牌を切っても向聴数が戻らないなら回し打ち。続けられるかどうかは巡ごとに見直す。
  • 親番・終盤の聴牌・自分の手が高いときは押しに、序盤の二向聴・安手・点棒に余裕があるときは引きに寄せるにゃ。